日本画の画材

岩絵具
日本画で一般的に使われている絵具です。基本的に量り売りで一両(約15g)単位で売っており、膠で溶いて使用します。
粒子状の絵具で、粒子の粗さで番号が分かれています。若い番号ほど粒子が粗く、白番(ビャクバン)が一番粒子が細かいです。
種類がいくつかあり、顔料系と染料系が存在します。
溶かした膠を適量混ぜて、しっかり膠と馴染ませてから水を加えて塗ってゆきます。
岩絵具の種類
天然:自然に存在する岩を砕いて絵具にしたものです。昔は天然絵具しか存在していませんでした。存在感の強い色が多く下手をすると絵が負けます。高価な色が多いです。

新岩:溶かして色をつけたガラスを砕いて絵具にしたものです。色の種類が豊富で同じ色なら天然よりも廉価です。一番多く使う種類かもしれません。

水干(スイヒ):染料系の絵具です。天然の物もあります。彩度の高い色も多く、沈みがちになりやすい日本画ではありがたい存在です。膠で溶いて水を加えたら、しばらく置いて上澄み液のみ使います。染料系なので厚みは出せません。

合成:砕いたガラスに色をつけたものです。発色の良い色が多いですが、色を後から付けている特性上、経年変化に弱いので仕上げには使わない方が無難です。安いので地塗り用に使うのも良いかもしれません。
胡粉(ゴフン)
絵具の一種ですが特殊なので別枠にしました。
胡粉とは貝の裏から採取した白い絵具の事です。独特の発色や、扱いなど、他の絵具とはちょっと違っています。同じ胡粉でも種類があり、地塗り用の盛上げ胡粉から発色が高い飛切まで用途によって使い分けて下さい。これも膠で溶いて使いますがいくつか工程があり、まず、乳鉢で磨って粉にします。5時間位磨ると発色がすごく良くなるそうです。そんなに長時間は無理、と言う人も最低30分は頑張りましょう。
磨り終わったら膠で溶きます。団子状に丸まる位の膠を入れて下さい。
団子状に丸めたらそれを乳鉢か皿に叩き付けます、百叩きと言われてます。その名の通り100回叩いてください。これで膠を馴染ませます。
終わったら少しずつ水を加えてゆっくり溶いてください。これでようやく使えます。水で溶く前にお湯に漬けて灰汁抜きする事もあります。
以上の工程を積むと発色が良くなります。盛上げ胡粉以外は必ずやっておきましょう。
筆の種類と説明

筆の画像 左から:長流・如水・面相・削用・則妙・金泥書・彩色・隈取・ドーサ刷毛・絵刷毛・平筆・連筆

日本画でよく使うものを上げていきます。
付立筆:穂先がよく揃っていて、穂の中心部分に腰のしっかりした毛が入っており弾力性がある筆です。 線描きにも付立(墨の濃淡に変化をつける描き方)にも没骨(線を描かず面で表現する描き方)にも使える万能タイプの筆です。長流だけで絵が描けると言う人もいらっしゃいます。今から日本画を始めると言う人はまず長流を買っておくと良いでしょう。
種類:長流・行雲・玉蘭・如水など

線描き筆:細い線を描く為の筆で輪郭線や細かい部分を描くのに使います。面相のように細い線を描くものや、削用のように削ったような切れのある線を描くものなどあります。番手の若い絵具だとすぐに穂先が死んでしまうので注意です。
種類:各種面相・削用・則妙・かすみ・快・金泥用筆・胡粉用筆など

彩色筆:文字通り彩色をする為の筆です。馬毛と羊毛の混合筆で絵具の含みが良く使い勝手の良い筆ですが、付立筆にお株を取られることも。
種類:各種彩色

隈取筆:ぼかし筆とも言います。画面においた絵具や墨をぼかす為の筆で、水だけを含ませてぼかしていきます。岩絵具はきっちり境界を分けて描きすぎると剥落する可能性があるので、それを防ぐためにも使います。

刷毛:絵刷毛以外にも、ドーサ、水引き、ぼかしなど様々な用途で使います。また、用途によっては専用の刷毛もあります。一度この用途で使うと決めたら、他の用途では使わないようにしましょう。絵刷毛に使ったものをドーサで使ったりすると泣きを見ます。

ドーサ刷毛:専用の刷毛があります。やわらかい毛なので和紙を痛めにくいです、逆に痛みやすいのでドーサ以外に使ってはいけません。

唐刷毛:ぼかし用の筆で唯一水に濡らさずに使います。独特の味わいがでるのが特徴。

平筆:柔らかく、水の含みが良い筆で、広い面を塗ったり平刷毛のように使ったりと幅広く使えます。

連筆:日本画と言えばこれ!?ともいえるインパクトのある筆です。初めて見た人はなんだこれ!!と思うのではないでしょうか?筆を数本連ねて平筆のようにしたもので、刷毛では出せない表現ができます。また絵具の溜りが起こりにくく、全体を均一に塗ったり、グラデーションを出したり、ぼかしを出したりと幅広く使えます。
膠の種類
一口に膠と言っても和膠、洋膠とありさらにその中でも色々種類があります。
ここでは主に日本画でよく使う膠について説明します。と言っても私もあまり詳しくないので見聞きした程度の知識ですが・・・。

三千本膠:牛皮が原料の膠で一貫目(一貫≒3.75kgらしいです)が三千本になることからこう呼ばれています。 和膠の一種で、吸水性のある不純物が適度に混じるため、柔軟で接着力が穏やで、日本画用の膠としてよく用いられています。発色も粒より三千本の方が良いとか。
従来の製法による三千本膠は高齢化の問題で製造中止となってしまい、一時期品質が低下したり、手に入りにくかったりしたのですが、現在は新たな製法で製造されているそうで一安心です。
30cm位の棒状になっているので、タオルで包んでからへし折ったり、ペンチである程度の寸法にカットしてから使います。三千本膠は水に浸してふやかしてから湯煎にかけて溶かすのですが、長時間水に浸すと接着力が低下するので注意しましょう。シャレにならんレベルで低下します。
夏は2時間位で腐ったりするので冷蔵庫必須です。

粒膠:牛皮が原料膠ですがこちらは洋膠に分類されるます。
純度が高く、接着力や乾燥時の張力が強く、また三千本と比べて腐りにくいのが特徴です。
水に浸しておく必要がなく60度で15~20分位で溶解します。時間の無い時用に持っておくと良いです。

乾燥鹿膠:洋膠を二次加工したものです。1cm弱の立方体で透明度、接着力に優れています。壁面や木面の絵画に多く使われます。防腐剤が入っていて主に夏場の湿度の高い時期に使われます。

軟靱鹿膠:乾燥鹿膠の改良品で、湿潤剤を加える事により乾燥時の張力を和らげ、接着力を落とさずにヒビ割れを最小限に抑えたものです。冬場など乾燥した時期や大作のヒビ割れ防止に最適です。

ビン入り鹿膠:ゼリー状で必要な量だけスプーンで取って使用します。湯せん、または絵皿で直接弱火にかけて溶かします。初心者や急ぐ場合の小作品に良いかと。
鹿膠という名前ですが、現代では膠は殆ど牛を使っていて、鹿膠というのは商品名になってるみたいです。

京上膠:牛皮を原料とする和膠です。墨の原料として使用されたり、添加物が少ないことから文化財の補修にも使用されるとか。

兎膠:主にテンペラ画等の下地の接着剤として用いられるようです。良質で、接着力と耐水性に優れています。

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