日本画の描き方

はじめに
ここでは日本画の基本的な描き方を順番に説明していきます。
大まかな工程としては、和紙の下準備·水張り·下図の準備·地塗り·トレース·骨描き·着彩といったところでしょうか。勿論こう描かなくてはいけないというルールはありませんが、水彩の感覚で描こうとすると上手くいきにくいので注意してください。
日本画は和紙や絹本に描くことが多いのですが、一般的な和紙に描く方法を紹介します。
和紙の下準備、ドーサを引く
和紙も種類が色々あるのですが一般的には雲肌麻紙などの厚めの和紙を使います。
和紙はパネルに水張りをしないと塗った時ぐにゃぐにゃになってしまうので、水張りが出来るようパネルより大きめにカットします。古毛布などの柔らかい物の上に折れないようにおいて、表側にドーサを引きます。ドーサは暖かい内に紙を痛めないようゆっくり引いてください。そのまま乾くまでおいておきます。
和紙が乾いたら裏返して裏ドーサを引きます。今度は冷えたドーサを使ってください、暖かいドーサだと表に引いたドーサに影響がでます。
ドーサは絵の具のにじみを抑制する為のものなので、にじみを活用した絵を描きたいという時は引かないという手もあります。
和紙の下準備、裏打ち
ドーサが乾いたら裏打ちをします。裏打ちは和紙を補強する他、パネルから上がってくる灰汁を防いだり、絵の具の塗りムラを抑制するとか言われてます。絵のサイズが大きいと技術力が問われてくるので大変ですが、裏打ちはやっておいた方が良いでしょう。
揉み紙をした時は必ず裏打ちしてください。
水張り
裏打ちが終わって、紙が乾いたら、水張りします。水張りは前面に糊をかけて張る方法と、側面にのみ糊をかけて張る方法があるのでお好みでどうぞ。描いた後別の紙に貼りなおしたり、すごく厚塗りする場合は、後で剥がせるよう側面にのみ糊をつける方法をとった方がいいです。
水張りはひめのりなどの澱粉糊を使うのが一般的です。障子を張り替える時に使う糊ですね。
また、和紙は画用紙より伸縮率が高いのであまり引っ張らないように張るのがコツです。
下図(小下図)
和紙は非常に表面が傷みやすい為、水彩や油絵の様に鉛筆などで直接描いたり消したりするのはほぼ無理です。和紙に先端の硬い画材で直接描くのは控えた方が良いでしょう。
直接描けないので下書きをトレースするのですが、その下書きのことを下図と言います。これが完成する絵の構成になるので、念入りに作ってください。トレースに使うので薄い紙で作ってください。
下図は描く絵の原寸で描くのですが、絵が大きい時は小さい下図を描いて調子を見ます。これを小下図と言います。
大下図
絵が大きい時は小下図で調子を見てから原寸に拡大します。拡大は昔ながらのスケールを使った手描き拡大でも良いですし、さっさとコピッてしまっても良いと思います。ただ、コピーは若干変倍がかかるので注意してください。 大きくなると小さい時は気づかなかった部分が出てくるので、構成はしっかり見直してください。ここで手を抜くと後で泣きをみます
地塗り
下図と平行して地塗りをしておきます。地塗りとは全体の色味や背景色を全体的に塗っておく作業です。日本画はある程度色を重ねた方が、色味に深さが出やすいですし、マチエールなども初めに作っておいた方が後で楽です。何度も色を重ねる場合、乾いてから次を塗るので意外と時間がかかります。早めに取り掛かっておきましょう。
和紙は、画用紙に比べてクリームがかった色をしていますし、さらにドーサをかけるので元の色はかなり黄色に傾いています。地を生かすのでなければ地塗りはしておいた方が無難です。
トレース
下図、地塗りが終わったらトレースに入ります。トレースの際はパネルの端と下図の端がずれないよう注意してください。又、絵の具の特性で場合によっては何度もトレースを繰り返す事にもなるので、合わせはしっかり決めておきましょう。何度もトレースしそうな所や細かい所はトレーシングペーパーに描いておくと言う手もあります。
トレースには念紙を使いますが、チャコペーパーでも代用できます。私は鉛筆で真っ黒に塗りつぶした紙をトレース用紙にしてます。
ただ、カーボン紙は油性なので、絵の具をはじきます。使う時は十分注意してください。
骨描き
トレースが終わったら骨描きします。骨描きとは要するにペン入れの事です。ただしペンではなく筆を使います。色は何でも良いですが基本的に墨を使います。墨を使う時はよほど急ぎでない限り墨を磨って下さい。色の調整が自分で出来ますし、墨汁とは色味が違います。筆ペンは絶対に使わないように。水性なので着彩した時、溶けます。
骨描きが終わったらしっかり乾かしましょう。丸一日は乾燥に費やしたほうが良いです。
着彩
骨描きが乾いたらいよいよ着彩です。好きに塗って構いませんが、割れたり剥落したりするので、白番の絵の具ばかり使うのは控えたほうが良いです。基本的には初めは強めの膠で溶いた絵の具を使い、後のほうでは薄めの膠で溶いた絵の具を使うと、下に塗った絵の具が動かなくなりやすいそうです。
何度も色を重ねた為に墨の線が見えなくなった時は、再度トレースして骨描きしてください。
以上基本的な描き方でした。色々めんどそうに見えますが、慣れるとそうでもありません。是非やってみてください。

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